折箱の歴史と特徴について
こんにちは、業務用テイクアウト容器通販サイト「折箱堂」スタッフの田中です。
皆さんは、「折箱(おりばこ)」についてどれくらいご存じでしょうか。もしかすると、「折箱」という言葉を、初めて聞いたという方も、中にはいらっしゃるかもしれません。
確かに、「折箱(おりばこ)」という言葉はあまり身近な言葉ではないかもしれません。しかし、実は「折箱」は私たちにとって、とても身近な存在なのです。
参考(上):道の駅みぶのオリジナル駅弁(福弁) 参考(下):JR東海パッセンジャーズ
例えば、皆さんが外出時、新幹線や道の駅でお腹が空いた時、「お腹が空いたな~お弁当でも買おうかな?」と駅弁などを買うことがあると思います。実は、このお弁当に使われている容器こそが、「折箱」なのです。そう考えると、この「折箱」は至る所にあることがお分かりいただけるのではないかと思います。
今回は、私たちの身近にある「折箱」について、その歴史と特徴をまとめてみました。折箱の意外と知られていない歴史や新しい折箱の流れについても触れていきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
目次
折箱とは
まず、「折箱」とは一体どんなものを指すのでしょうか。「折箱」とは、もともとは経木と呼ばれるエゾ松や杉・シナ等の木材を使用した木箱の事を指す言葉でした。木材に加工を加えて経木にし、経木を材料として更に加工を加えた比較的浅い木箱の事を「折箱」と呼んでいたのです。
元々は木材を使用していた折箱ですが、現在は、木製の折箱だけではなく、様々な材質が使用されており、箱製品の総称として「折箱」という言葉が使用されるようになっています。現在使われている折箱の材質としては、木材の他にプラスチック、発泡スチロール、紙、竹材などがあり、様々な材料で作られています。
この折箱を良く目にするのが、デパ地下の食品売り場や、新幹線・サービスエリア・空港などでしょう。折箱は、これらの場所で「お弁当の容器」として広く使われています。
ちなみに、新幹線・サービスエリア・空港などにあるお弁当の呼び名としては、「駅弁」という言葉が一般的でしたが、最近では、駅のホームなどで購入できるのが「駅弁」、高速道路のSA・PAでは「速弁(はやべん)」、空港では「空弁(くうべん)」という呼び名も出てきているようです。これらのお弁当には、全て「折箱」が使われているのです。
また、デパ地下などでの物産展でも、折箱を使ったお弁当が良く見られます。その他、最近では、コロナ禍の影響もあり、テイクアウト容器として折箱の需要が伸びています。以前は行楽や行事の際に使用されていた折箱ですが、現在ではレストランや料理店のテイクアウト容器として日常的に使用されるようになっています。「折箱」が、より身近な存在になっているんですね。
折箱の起源と語源
「折箱」の起源と私たち日本人の生活とは、密接に関わっています。私たちが住む日本は、現在でも約3分の2が森林であり、木と共に生活していたと言ってもいいでしょう。そのような豊かな自然環境の中、はるか昔の御先祖様たちは、木材を建物や生活道具、また薪などの燃料などにも使っていました。
木は軽くて丈夫で長持ちするのはもちろん、加工しやすく、さらに通気性、吸水力、保湿力、防湿 力に優れ、香りまで良く、まさに貴重な資源です。木を使った色々な道具が生まれ、そのなかで物や食材を「入れるもの」、「包むもの」が登場してきます。
「折箱」についても、かなり古くから使用されていたようです。6世紀頃に、聖徳太子が当時中国大陸にあった「随」の国からさまざまな文化を輸入した際、朝廷への献上物を入れるために木箱の容器を使用したとされています。この木箱の容器が、「折箱」の起源であると言われています。
また、「折箱」の語源はどうでしょうか。調べてみると、「折箱」の語源には、宮人や貴族が食事を乗せていた白木の盆「折敷(おしき)」が語源である説や、神道で神様にお供えする際に使用する食膳として使われた折敷(おしき)が語源とする説があることが分かりました。
その他にも、『日本大百科事典:ニッポニカ』によると、「折櫃(おりびつ)」「檜の薄板を折り曲げて作った、方形または角切りの箱で、食物や菓子などを盛るのに使用した。古く「おりうず」といったのは、木を曲げて作ったからである」…(中略)…後世、蓋もついて折箱、略して「折」と呼ばれ、宴会などの後に持ち帰れるようになった。現在、行楽などに使用される折箱は、これである」という記述がありました。
参考(上):菊彩絵折櫃(きくさいえおりびつ)九州国立博物館収蔵
参考(下):折櫃型のお弁当箱、大館曲げわっぱ隅丸二ツ重弁当
こうして見ると、日本には、かなり古くから折箱の原型があったということが分かります。歴史を知ると、また折箱を見る見方も変わってくるかもしれませんね。語源についても、「折」という漢字が、古い時代からずっと受け継がれているということに歴史を強く感じます。
折箱の歴史と変遷
折箱には、かなり古い歴史があることが分かりましたが、その後はどのような使い方をされて現代まで受け継がれてきたのでしょうか。ここでは、江戸時代以降の折箱の歴史と時代ごとの移り変わりをまとめていきたいと思います。
江戸時代になると、芝居の幕間に食べる「幕の内弁当」の容器として使用されるようになりました。現代でも「幕の内弁当」という言葉は健在であることに驚きますが、折箱はその幕の内弁当にも使用されていたのですね。
明治時代には鉄道が登場し、駅弁の容器として全国に広がりました。「駅弁」も現代の私たちのとても身近な存在であると言えるでしょう。軽くて、持ち運びしやすい折箱は、旅行にも大変重宝したのでしょうね。
参考:明治22年(1889年)、姫路駅で売られた日本発の幕の内弁当の再現(画像提供・まねき食品)
ちなみに、日本最古の駅弁がどこの駅でいつ発売されたのかについては諸説ある様で、1885年(明治18年)7/16発売の宇都宮説があります。これは握り飯2個を竹の皮に包んだだけのものだったようです。一方、「折箱」に入った駅弁としては1890年(明治23年)姫路駅が最初の説や、1886年(明治19年)名古屋駅の説もあるようです。
その後高度成長期に入ると、1964年には東京オリンピックの開催もあり、大量生産・大量消費の時代に入りました。プラスチック製の折箱は、外食容器として衛生的であることや経済的であること、また作りやすく大量生産できることなどから、スーパーマーケットでも使われ始めました。
こうして考えると、現在の折箱に近い形状になってから1886年~2021年までで、なんと約135年もの歴史が「折箱」にはあるのですね。
そして、この約135年間の間に、折箱は様々に変化してきました。戦後は、プラスチック製品や紙などで作られた折箱が大量に生産されるようになり、時代とともに変化し、多種にこだわった形状の折箱や色柄が多く出回るようになりました。
一方、木製の折箱は、安価なプラスチック製の折箱に押され、次第に木製の折箱を取り扱う業者が少なくなってきているのが現状でした。しかし、近年の環境問題の深刻化から、「脱プラ」つまりプラスチックに代わる材質として、木製や紙製の折箱は再度注目されるようになってきてています。
こうして折箱の歴史と変遷を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。箱としての「折箱」には、なんと約135年もの歴史があるのですね。様々な社会情勢の変化の中で、折箱は受け継がれてきました。このことを考えると、折箱は紛れもなく日本文化であると言えると思います。
折箱の特徴
ここまでは、折箱の歴史的な側面を見てきましたが、ここからは「折箱」の箱としての性能について、掘り下げてみたいと思います。
食品容器としての経木からつくる「折箱」は、木が持っている特徴と日本の四季の気候にとても合っています。具体的に折箱は、通気性が良く、吸水力・保水力・防腐力が抜群であり、木が本来持っている「抗菌作用」が食材の腐敗を遅らせる効果がある為、食品の鮮度を保ち日本の四季を通じて料理を安全に頂くことができます。
また、経木の折箱はご飯やおかずの水分を程よく吸収してくれ、冷めても美味しいお弁当を作ることができます。
近年は「ファルカタ材」を使用した木製の容器が見られるようになりました。このファルカタは5~7年で伐期を迎える早生樹の事で、原産地は東南アジアに分布しています。日本の「桐」に似ていることから桐の代用品としても使用されています。
駅弁やデパートでよく見かける紙製の折箱・プラスチック製の折箱の特徴は、木製に比べ、比較的安価に製造できることや、材料から製品にするまでに加工がしやすい特徴があり、非常に多く使用されています。
特に現在では、プラスチック(PSP(発泡ポリスチレン)等)を材料にしている折箱が主流となっています。プラスチック食品容器は、発泡性が高いため、軽く断熱性に優れています。また、保温や保冷に適した素材です。 弾力があり衝撃吸収性に優れている極めて加工性が高く、成形や切削に適しています。
こうしたプラスチック(PSP(発泡ポリスチレン)等)の特性を生かし、折箱の形状も四角形から、丸、楕円、8角形、本の形、箪笥の引出しの形などの多彩な形状が作られ、食を支える、引き立てる、楽しませる「器」として活用されています。
日本独特の食文化と折箱
これまで折箱の歴史や素材などを見てきましたが、ここからは現代の食文化と折箱の関係を見ていきましょう。
現代では、「折箱」に食品を詰めたものを「折詰」(おりづめ)といい、折箱、折詰は「折」(おり)ともいいます。お寿司を詰めたものは「寿司折」、菓子を詰めたものは「菓子折」などと呼ばれていますね。
その他、日本には四季があり年間を通じていろいろな行事があります。お正月には「おせち」、節分には「恵方巻」、ひな祭りには「ちらし寿司」お花見には「花見弁当」、土用の丑の日には「うなぎ」などです。また、めでたいお祝い事などには「赤飯」を食べますね。これらの特別な行事食には、折箱が使われています。
また、日常でも飲食店やスーパー・デパ地下などでは「折箱」を使用しているお弁当が最近では当たり前の様に見る事ができます。
この折箱は、世界中のどこを探しても同類のものを見つけることができません。折箱は、我が国、日本の食文化の一端を担ってきた日本固有の食品容器と言えるでしょう。こうした身近にある「折箱」の存在は、あらためて日本古来からの食品容器であり、今後も日本の食文化を支える「名わき役」的な役割を演じてくれる存在であると思います。
折箱の歴史と特徴、まとめ
今回は、折箱の歴史と特徴についてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。改めて調べてみると、折箱の歴史の古さ、日本文化と「折箱」の密接な繋がりを改めて感じることができました。
折箱は、食材の作り手の想いを運び、食事を頂く上でも華を添えるものです。日本独自の文化である折箱を、ぜひ後世にも引き継いでいきたいと感じました。今回の記事で、皆さんに少しでも「折箱」のことを知っていただき、より身近に感じていただければ幸いです。最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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